発光ダイオード事件|特許異議における請求項ごとの訂正

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発光ダイオード事件は、旧法の特許異議手続で、請求項の減縮を目的とする訂正の許否を請求項ごとに判断すべきとした判例です。最高裁は、別の請求項の訂正が不適法というだけで訂正全部を認めなかった処理を違法とし、請求項1についての特許取消決定を取り消しました。[1]

基本情報 内容
判決 最高裁第一小法廷・平成20年7月10日
事件番号 平成19年(行ヒ)第318号
掲載 裁判所ウェブサイト・判決全文
主な関連条文 当時の特許法旧120条の4・旧126条、現行113条・120条の5・126条
結論 請求項1に関する原判決を破棄し、その特許取消決定を取消し。その余の上告は棄却

1.弁理士試験のポイント

本判決の対象は、特許異議申立事件に付随する訂正請求です。独立した手続である訂正審判と区別します。また、請求項ごとに判断する場面と、一つの請求項に複数の訂正事項が含まれる場面も分けます。

確認事項 本判決の判断
対象の手続 旧法の特許異議申立事件における訂正請求
判断対象 異議申立てがされた請求項の減縮を目的とする訂正
判断の単位 訂正の対象となる請求項ごと
他の請求項の訂正が不適法な場合 そのことだけで訂正全部を認めない処理は許されない

現行法には、訂正審判についても請求項ごとの請求と「一群の請求項」の規定があります。本判決が述べた当時の訂正審判の一体不可分性を、そのまま現在の規則として説明しないことが大切です。[1・4〜6頁、2]

2.事件の概要

権利者は、「発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源」という発明について、四つの請求項を持つ特許権を取得していました。第三者が請求項1〜4の特許に異議を申し立てたため、権利者はその手続中に特許請求の範囲の訂正を請求しました。

訂正事項aは請求項1、bは請求項2、cとdは請求項3と4に対応していました。権利者は、aは特許請求の範囲の減縮、bは明瞭でない記載の釈明を目的とすると主張しました。cとdについては、単なる形式的な誤記の訂正と説明していました。[1・1〜2頁]

特許庁は、bが認められる訂正の目的に当たらず、請求項の範囲を実質的に拡張すると判断しました。そのため、aなどの適法性を検討せず、訂正全部を認めませんでした。そのうえで、訂正前の発明には進歩性がないとして、請求項1〜4の特許を取り消しました。[1・2〜3頁]

権利者が取消決定の取消しを求めましたが、知財高裁は請求を棄却しました。そこで、最高裁が訂正の判断単位を検討しました。

3.争点

争点は、異なる請求項に対応する訂正事項を、一体として許可又は不許可にすべきかです。特に、請求項2の訂正が不適法というだけで、請求項1の減縮訂正まで認めないことが許されるかが問題となりました。

原審は、権利者が一部の箇所だけの訂正を求める趣旨を特定して明示していないため、請求全体を一体不可分として扱いました。最高裁は、訂正審判と特許異議中の訂正請求の手続上の違いに着目しました。[1・3〜5頁]

4.裁判所の判断

4-1.判断の基準

最高裁は、特許異議手続中の訂正請求のうち、異議申立てがされた請求項について、特許請求の範囲の減縮を目的とするものは、請求項ごとに許否を判断すべきとしました。

一部の請求項の訂正事項が訂正要件に合わないという理由だけで、他の請求項の訂正も含めて全部を認めないことは許されません。ここでの基準は、あらゆる訂正を無条件に切り分けるという意味ではありません。判示した手続と訂正目的を確認する必要があります。[1・6頁]

4-2.判断の理由

特許法は、一つの出願に一つの特許を付与することを基本とします。出願を分割しないまま、ある請求項だけを特許査定し、残りを拒絶査定する扱いは予定していません。一方、特許異議は請求項ごとに申し立てることができ、特許取消しの当否も請求項ごとに判断されます。

最高裁は、この異議に対する防御手段である減縮訂正も、請求項ごとに求めるものと理解しました。攻撃側が請求項ごとに争えるのに、権利者の訂正だけを全体として扱うと、攻撃と防御の均衡を欠くからです。[1・4〜5頁]

当時の独立した訂正審判では、新規出願に準ずる実質や独立特許要件が重視されました。これに対し、本件のような減縮訂正は異議手続に付随するもので、当時の規定上、異議の対象となった請求項には独立特許要件が要求されませんでした。両手続の位置付けが違うため、同じ扱いを当然には採れないとしました。[1・4〜5頁]

原審が参照した昭和55年5月1日判決は、複数の請求項を観念できない実用新案登録請求の範囲に、複数の訂正事項が含まれた訂正審判の事件でした。その趣旨は、一つの請求項の中の複数の訂正事項には妥当しても、異なる請求項ごとの判断にまで及ぶものではないと説明しました。[1・6頁]

4-3.本件への当てはめ

訂正事項aは、異議申立ての対象である請求項1について、減縮を目的とすると主張して請求されたものでした。そのため、請求項2の訂正事項bとは切り分けて、a自体の許否を判断する必要がありました。

ところが、特許庁はbの不適法性だけを理由に、aを検討していませんでした。そのまま訂正前の請求項1を基に発明を認定し、特許を取り消した処理には、取消しを要する瑕疵がありました。最高裁は、その瑕疵を見逃した原審にも法令違反があるとしました。[1・6〜7頁]

4-4.判決の結論

最高裁は、請求項1の特許取消決定に関する原判決の部分を破棄し、特許庁の取消決定のうち請求項1に係る部分を取り消しました。裁判所に差し戻した判決ではありません。

請求項2〜4に関する上告は、対応する上告受理申立て理由が受理決定で排除されていたため棄却しました。特許全体の取消決定が取り消された、とまとめると不正確です。また、aを個別に検討すべきという判断と、訂正後の請求項1が最終的にすべての特許要件を満たすという判断も別です。[1・1、7頁]

5.判例の射程と現行法との関係

本判決は、旧法の特許異議における減縮訂正の判断単位を示しています。旧120条の4を、現在の訂正請求の条文として引用しないようにします。

現行法では、113条が請求項ごとの異議申立てを認めています。120条の5第3項は、二以上の請求項に係る訂正を請求項ごとに請求できるとし、異議が請求項ごとにされた場合には、訂正も請求項ごとに行うことを定めています。同条4項では、引用関係などを持つ「一群の請求項」は、その一群ごとに請求する必要があります。[2]

訂正審判についても、現行126条3項は請求項ごとの請求を認め、一群の請求項については一群ごとの請求を求めています。したがって、「訂正請求は請求項ごと、訂正審判は必ず全体で一体不可分」とする覚え方は、現行法には適しません。

判例から手続ごとの攻撃防御の関係を学び、現在の事案では、請求項同士の引用関係、訂正対象、訂正目的を現行条文に照らして確認します。

6.確認問題

問い1 本件で、請求項2の訂正が不適法なら、請求項1の減縮訂正も検討せずに拒むことができましたか。

できませんでした。請求項1は異議の対象で、減縮訂正を求めていたため、請求項ごとに許否を判断すべきでした。

問い2 現行法で、引用関係のある請求項も、常に一つずつ独立に訂正請求できますか。

常にできるとはいえません。「一群の請求項」に当たる場合には、120条の5第4項や126条3項により、その一群ごとに請求する必要があります。[2]

出典

法令データの取得基準日:2026年10月4日。関係条文の照合日:2026年10月5日。確認問題は独自に作成した学習用設問です。