TRIPS協定 附属書
条文本文
1 第三十一条の二及びこの附属書の規定の適用上、
(a) 「医薬品」とは、《知的所有権の貿易関連の側面に関する協定》及び公衆の健康に関する宣言(文書番号WT/MIN(〇一)/DEC/二)の1において認められる公衆の健康に関する問題に対処するために必要とされる医薬分野の特許を受けた物又は特許を受けた方法によって生産された物をいう。医薬品には、その生産のために必要な有効成分及びその使用のために必要とされる診断用品を含むものと了解する。(注)
注:この(a)の規定は、(b)の規定の適用を妨げるものではない。
(b) 「輸入する資格を有する加盟国」とは、後発開発途上加盟国並びにその他の加盟国であって、貿易関連知的所有権理事会に対して第三十一条の二及びこの附属書に規定する制度(以下この附属書において「当該制度」という。)を輸入国として利用する意図を有する旨の通告(注1)を行ったものをいう。加盟国は、全面的に又は限られた範囲で、例えば、国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合又は公的な非商業的使用の場合にのみ、当該制度を利用する旨の通告をいつでも行うことができるものと了解する。一部の加盟国(注2)は、輸入する資格を有する加盟国として当該制度を利用しないことに留意し、他の一部の加盟国は、輸入する資格を有する加盟国として当該制度を利用するのは国家の緊急事態その他の極度の緊急事態の場合に限ることを表明していることに留意する。
注1:当該制度を利用するために、この通告が世界貿易機関の内部機関によって承認される必要はないものと了解する。
注2:オーストラリア、カナダ、欧州共同体並びに第三十一条の二及びこの附属書の規定の適用上はその構成国、アイスランド、日本国、ニュージーランド、ノルウェー、スイス並びにアメリカ合衆国
(c) 「輸出加盟国」とは、輸入する資格を有する加盟国のために医薬品を生産し、それを当該輸入する資格を有する加盟国に輸出するために当該制度を利用する加盟国をいう。
2 第三十一条の二1の条件は、次のとおりとする。
(a) 輸入する資格を有する加盟国(注1)は、貿易関連知的所有権理事会に対して次の条件を満たす通告(注2)を行う。
注1:第三十一条の二3に規定する地域的な機関は、当該機関の構成国であって当該制度を利用する輸入する資格を有する加盟国であるもののために、当該機関の構成国の同意を得て、この(a)の規定に従って要求される情報を提供する通告を共同で行うことができる。
注2:当該制度を利用するために、この通告が世界貿易機関の内部機関によって承認される必要はないものと了解する。
(i) 必要な医薬品の名称及び予測される数量を通告において特定すること(注)。
注:世界貿易機関事務局は、この通告を、世界貿易機関のウェブサイトの当該制度のために供されるページを通じて公に利用可能とする。
(ii) 後発開発途上加盟国以外の輸入する資格を有する加盟国にあっては、自国が、関係する医薬品の医薬分野における生産能力が不十分であるか又は生産能力がないことをこの附属書の付録に定めるいずれかの方法によって立証したことを通告において確認すること。
(iii) 医薬品が自国の領域において特許を受けている場合には、第三十一条及び第三十一条の二並びにこの附属書の規定に従い、強制実施許諾を与えているか又は与える意図を有していることを通告において確認すること(注)。
注:この(iii)の規定は、第六十六条1の規定の適用を妨げるものではない。
(b) 当該制度の下で輸出加盟国が与える強制実施許諾には、次の条件を含めるものとする。
(i) 輸入する資格を有する加盟国のニーズを満たすために必要な量のみを強制実施許諾に基づき生産することができること、及び貿易関連知的所有権理事会に対してそのニーズを通告した輸入する資格を有する加盟国に対して生産量の全部を輸出すること。
(ii) 強制実施許諾に基づいて生産された医薬品を、特定のラベル又はマークを付することにより、当該制度の下で生産されたものとして明確に特定すること。供給者は、特別の包装を行い、又は当該医薬品自体を特別な色若しくは形状とすることによって識別することが実行可能であり、かつ、価格に重大な影響を及ぼさない場合には、そのような方法により当該医薬品を識別すべきである。
(iii) 船積みが始まる前に、強制実施許諾を得た者がウェブサイト(注)に次の情報を掲示すること。
(i)の規定により各仕向地に供給される量
(ii)の規定による医薬品の特徴
注:強制実施許諾を得た者は、この目的のため、自己のウェブサイト又は世界貿易機関事務局の援助を得て世界貿易機関のウェブサイトの当該制度のために供されるページを利用することができる。
(c) 輸出加盟国は、強制実施許諾(それに附帯する条件を含む。)を与えたことを貿易関連知的所有権理事会に通告する(注1、注2)。提供する情報には、強制実施許諾を得た者の氏名又は名称及び住所、強制実施許諾が与えられた医薬品及びその量、当該医薬品が供給される予定の国並びに強制実施許諾の期間を含む。通告には、(b)(iii)に規定するウェブサイトのアドレスも表示する。
注1:当該制度を利用するために、この通告が世界貿易機関の内部機関によって承認される必要はないものと了解する。
注2:世界貿易機関事務局は、この通告を、世界貿易機関のウェブサイトの当該制度のために供されるページを通じて公に利用可能とする。
3 輸入する資格を有する加盟国は、当該制度の下で輸入される医薬品がその輸入の基礎を成す公衆の健康のために使用されることを確保するため、自国のとり得る手段の範囲内で、かつ、自国の行政上の能力及び貿易の転換の生ずる危険度に応じて、当該制度の下で自国の領域に実際に輸入された医薬品の再輸出を防止するための合理的な措置をとる。輸入する資格を有する加盟国であって開発途上加盟国又は後発開発途上加盟国であるものがこの3の規定を実施することが困難である場合には、先進加盟国は、その実施を促進するため、要請に応じ、かつ、相互に合意した条件により、技術協力及び資金協力を提供する。
4 加盟国は、当該制度の下で生産された医薬品であって第三十一条の二及びこの附属書の規定に反して自国の市場に仕向地が変更されたものが自国の領域に輸入され、及びその領域において販売されることを防止するため、この協定により既に利用可能とすることが要求されている手段を用いて、効果的な法的手段を利用可能とすることを確保する。このような手段がこの目的のために不十分であることが証明されているといずれかの加盟国が考える場合には、当該いずれかの加盟国の要請により、この問題を貿易関連知的所有権理事会で検討することができる。
5 医薬品の購買力を高め、及びその現地生産を促進するために規模の経済を活用することを目的として、第三十一条の二3に規定する加盟国に適用される広域特許の付与について定める制度の発展が促進されるべきであることが認められる。このため、先進加盟国は、第六十七条の規定に従い、技術協力(他の関連する政府間機関との連携による技術協力を含む。)を提供することを約束する。
6 加盟国は、医薬分野における生産能力が不十分であるか又は生産能力がない加盟国が直面する問題を克服するため、医薬分野における技術の移転及び能力の開発を促進することが望ましいことを認める。このため、輸入する資格を有する加盟国及び輸出加盟国は、この目的を促進するように当該制度を利用することが奨励される。加盟国は、医薬分野における技術の移転及び能力の開発に特別な注意を払って、第六十六条2及び《知的所有権の貿易関連の側面に関する協定》及び公衆の健康に関する宣言の7の規定に従って行われる活動その他貿易関連知的所有権理事会の関連する活動において協力することを約束する。
7 貿易関連知的所有権理事会は、当該制度の効果的な運用を確保するために当該制度の実施状況を毎年検討し、及び一般理事会に対して当該制度の運用について毎年報告する。