TRIPS協定 第三十一条

特許権者の許諾を得ていない他の使用

条文本文

加盟国の国内法令により、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)(注)を認める場合には、次の規定を尊重する。

注: 「他の使用」とは、前条の規定に基づき認められる使用以外の使用をいう。

(a) 他の使用は、その個々の当否に基づいて許諾を検討する。

(b) 他の使用は、他の使用に先立ち、使用者となろうとする者が合理的な商業上の条件の下で特許権者から許諾を得る努力を行って、合理的な期間内にその努力が成功しなかった場合に限り、認めることができる。加盟国は、国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合又は公的な非商業的使用の場合には、そのような要件を免除することができる。ただし、国家緊急事態その他の極度の緊急事態を理由として免除する場合には、特許権者は、合理的に実行可能な限り速やかに通知を受ける。公的な非商業的使用を理由として免除する場合において、政府又は契約者が、特許の調査を行うことなく、政府により又は政府のために有効な特許が使用されていること又は使用されるであろうことを知っており又は知ることができる明らかな理由を有するときは、特許権者は、速やかに通知を受ける。

(c) 他の使用の範囲及び期間は、許諾された目的に対応して限定される。半導体技術に係る特許については、他の使用は、公的な非商業的目的のため又は司法上若しくは行政上の手続の結果反競争的と決定された行為を是正する目的のために限られる。

(d) 他の使用は、非排他的なものとする。

(e) 他の使用は、当該他の使用を享受する企業又は営業の一部と共に譲渡する場合を除くほか、譲渡することができない。

(f) 他の使用は、主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾される。

(g) 他の使用の許諾は、その許諾をもたらした状況が存在しなくなり、かつ、その状況が再発しそうにない場合には、当該他の使用の許諾を得た者の正当な利益を適切に保護することを条件として、取り消すことができるものとする。権限のある当局は、理由のある申立てに基づき、その状況が継続して存在するかしないかについて検討する権限を有する。

(h) 許諾の経済的価値を考慮し、特許権者は、個々の場合における状況に応じ適当な報酬を受ける。

(i) 他の使用の許諾に関する決定の法的な有効性は、加盟国において司法上の審査又は他の独立の審査(別個の上級機関によるものに限る。)に服する。

(j) 他の使用について提供される報酬に関する決定は、加盟国において司法上の審査又は他の独立の審査(別個の上級機関によるものに限る。)に服する。

(k) 加盟国は、司法上又は行政上の手続の結果反競争的と決定された行為を是正する目的のために他の使用が許諾される場合には、(b)及び(f)に定める条件を適用する義務を負わない。この場合には、報酬額の決定に当たり、反競争的な行為を是正する必要性を考慮することができる。権限のある当局は、その許諾をもたらした状況が再発するおそれがある場合には、許諾の取消しを拒絶する権限を有する。

(l) 他の特許(次の(i)から(iii)までの規定において「第一特許」という。)を侵害することなしには実施することができない特許(これらの規定において「第二特許」という。)の実施を可能にするために他の使用が許諾される場合には、次の追加的条件を適用する。

(i) 第二特許に係る発明には、第一特許に係る発明との関係において相当の経済的重要性を有する重要な技術の進歩を含む。

(ii) 第一特許権者は、合理的な条件で第二特許に係る発明を使用する相互実施許諾を得る権利を有する。

(iii) 第一特許について許諾された使用は、第二特許と共に譲渡する場合を除くほか、譲渡することができない。

出典:外務省条約集 TRIPS協定 第31条(日本語対訳)

外務省掲載の日本語訳です。附属書及びその付録を含みます。

本文確認日:2026-10-21